2023-10-06

「横尾忠則 寒山百得」展

  「横尾忠則 寒山百得」展を観ました。現代美術家・横尾忠則が、寒山拾得を独自の解釈で再構築した「寒山拾得」シリーズの完全新作102点を一挙初公開する展覧会です。



 唐代に天台山に住んでいたという禅の聖者・寒山(かんざん)と拾得(じっとく)。豊干(ぶかん)禅師に師事したという彼らの奇行は仏教の悟りに通じるとされ、中国や日本で伝統的な画題として数多く描かれてきました。また、寒山は文殊菩薩の、拾得は普賢菩薩の化身ともされています。寒山は筆と巻物を持ち、拾得は箒を持った姿で描かれます。2人の仙人・李鉄拐(り てっかい)と蝦蟇(がま)仙人と併せて描かれることもあります。



本館で関連展示があります。


「四睡図」平石如砥(へいせきにょし)、華国子文(かこくしぶん)、夢堂曇噩(むどうどんがく)賛(元時代・14世紀)

豊干禅師と虎、寒山、拾得が一緒に丸まって寝ています。

「寒山拾得図(禅機図断簡)」因陀羅(いんだら)筆、楚石梵琦(そせきぼんき)賛(元時代・14世紀)

とても楽しそうですね。笑い声が聞こえてきそうです。


 横尾先生の描く寒山は巻物の代わりにトイレットペーパー、拾得は箒の代わりに掃除機を持った姿で表されています。

「2021-10-24」

 新型コロナウィルス感染症の流行下、世俗から離れたアトリエで制作にいそしんだ横尾氏。ほぼ1日1枚のペースで描かれた作品は、まるで日記のようにサイン代わりに日付が記されています。

 とある名画にちなんでみたり…

「2022-03-24」

魔法のじゅうたんで空を飛んでみたり…

「2022-05-05」

幾何学的になってみたり…

「2022-12-12」

有名人に紛れ込んでみたり…

「ランボー(2021-01-23/2023-01-16)」

アーティスティックスイミングをしてみたり…

「2022-08-29」

山水図になってみたり…

「水墨山水(2023-01-14)」

おぼろげな姿になってみたり…

「2023-06-27」

 様々な世界を自由に行き来する寒山と拾得。この先も、横尾先生はいくらでも描いてくれそうな気がします。


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展覧会情報

会期 2023年9月12日(火)~12月3日(日)
会場 東京国立博物館 表慶館



京都・南山城の仏像

  「浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展 京都・南山城の仏像」を観ました。浄瑠璃寺九体阿弥陀の修理完成を記念した、京都の最南部・南山城(みなみやましろ)に伝わる仏像の展覧会です。



 平安後期、末法思想とともに、極楽浄土に生まれ変わることを祈願する浄土信仰が広がりました。あの世は生前の行いによって9つの階位に振り分けられるそうです。そしてそれぞれの階位にいらっしゃる阿弥陀如来が九体阿弥陀というわけです。九体寺とも呼ばれる浄瑠璃寺の九体阿弥陀像は当時の9体と専用の阿弥陀堂(堂宇)が現存する唯一の群像です。2018年度から2022年度までの5年をかけて修理されました。本展ではそのうちの一体がお出まし(上のチラシ左側です)。

 ほかには、平安時代(9~13世紀)の仏像がいろいろ。小ぶりながら繊細でシャープな彫りの美しい十一面観音、かたや3mに及ぶビッグな十一面観音、さらに珍しい坐った姿の十一面観音(十一面観音は立像で表されるのがほとんどです)、衣の色が鮮やかに残る広目天や多聞天(多聞天に踏まれている邪気はニヤリと余裕の笑みを浮かべていました)、細面で美しい象乗り普賢菩薩、制作当時の獅子に乗り頼もし気な笑みをたたえた文殊菩薩、等々…。いずれも木造。

 20点弱の小規模な展示でしたが、ぎゅっと内容の濃い展覧会でした。

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展覧会情報

 会期 9月16日(土)~11月12日(日)
 会場 東京国立博物館 本館 特別5室



アジアのパーティー

  「博物館でアジアの旅 アジアのパーティー」を観ました。東博東洋館の秋の恒例企画「博物館でアジアの旅」。今回はパーティーにまつわる品々の紹介です。



 メインビジュアルになっているのは、楽器を奏でる女性楽団の像です。墓に収められた華やかな陶俑です。

「加彩楽人(かさいがくじん)」(中国 唐時代・7~8世紀)

小ぶりでかわいらしいです。ここにあるのは4体ですが、本来はより多くの俑がセットになっていたと考えられています。

 ぽってりとした動物型の容器は、ワインなどの飲み物を入れたリュトンです。

「動物型リュトン」(イラン パルティア時代・前3~後3世紀)

古代イランでは様々な動物をかたどったリュトンが作られ、宴席や儀礼の場で用いられました。これはウマ?ラクダ? 何者なのかはわかりませんが、背中の穴から飲料を入れ、両前足の先から注ぐ仕組みになっています。つまり注ぎ口が二か所。扱いが難しそう…。

「山羊頭形リュトン」(イラン、ギーラーン地方 アケメネス朝時代・前6~前5世紀)

こちらのヤギのリュトンは鼻先の孔から注ぎます。素直に考えたら口から注ぐように作るのではないかと思うのですが、鼻の穴とは…。でもきっと奇抜なもののほうが宴会も盛り上がりますよね。


「画像石 酒宴/厨房」(中国山東省出土 後漢時代・1~2世紀)

こちらは先祖の霊を楽しませるための彫刻と考えられる画像石。上段に楽団、中段に曲芸や遊戯に興じる場面、下段に酒宴に出す料理を作る厨房の様子が描かれています。

こんな感じだそうです。左下でさばかれそうになっているのはイノシシかな?


「饗宴図浮彫」(パキスタン クシャーン朝・2~3世紀)

ギリシャ・ローマの神話が造形化されることの多いガンダーラ。このレリーフでは再生復活の象徴であるカンタロス杯を持つディオニューソス神が、膝に花嫁のアリアドネーを乗せている姿が描かれています(右側)。左側では肩に乗せた革袋から座る男の手に酒を注いでいます。お酒、袋に入れてたんですね。しかも結構な量が入っていそうです。飲むほうも器も使わず手に受けて飲んでるし…。浴びるように飲むというのはこのことでしょうか。


「衆人奏楽図」(高昌ウイグル期・10~11世紀)

中国・ベゼクリク石窟に描かれたウイグル人独自の仏教美術。この壁画のあった石窟の奥には塑像の涅槃仏像が安置され、この壁画の反対側には菩薩や仏弟子、諸国の王が仏の死を嘆き悲しむ場面が描かれていたそうです。ということは、これは天上の音楽を奏でている様子なのでしょうか。

みなさん表情が素敵。



 近頃は例の感染症の規制もゆるくなったので、パーティーを楽しむ人も増えているのでしょうか。あるいは物価高と円安でパーティーどころではないのでしょうか。とにもかくにも、いつの世も、酒と音楽があればみんなしあわせ!ということらしいです。

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展覧会情報

 会期 2023年9月26日(火) ~ 2023年10月22日(日)
 会場 東京国立博物館 東洋館