「版画家たちの世界旅行 -古代エジプトから近未来都市まで」を観ました。西洋版画を中心にした、旅や移動に関わる16~20世紀の作品の展覧会(新型コロナウイルス感染症の影響により展示期間が大幅に短縮された2021年の「#映える風景を探して」展を再構成した収蔵品企画展)です。
メインアートになっているのは、エディ=ルグラン(1892-1970)著「マカオとコスマージュ または幸福の経験」(1919刊)という絵本の挿絵。金属板や型紙を用いて着色するポショワール(ステンシル)で作られた絵本です。並外れたモダニズムにあふれた児童出版の傑作といわれています。1919年の出版以来、再版されたことはありませんでしたが、ついに2000年に再販。Amazonでも買えます。日本語版は出ていないようです。アールデコ調の文字もかわいいので、もし翻訳版を出すならこれ用に日本語フォントを作ったほうがいいのではないかしら。
Macao et Cosmage ou l'expérience du bonheur par Edy-Legrand
風景が画題として評価されるようになる前、風景は聖書や神話を取り入れて描かれることで、「英雄的風景」「理想的風景」としてアカデミーで賞賛されました。
…むむ、聖家族は中心にいるけれど、小さな天使たちはどこだ?
19世紀の西洋では、古代エジプトの歴史や文化がブームになりました。
こちらは「#映える風景を探して」展でも推しの作品でしたね。「エジプト誌」は、ナポレオンの命を受けて刊行された全23巻の書物。イギリスとの戦争に敗れたフランスは、ロゼッタ・ストーンなどの収集品を手放すことになったため、本書はフランスにおけるエジプト学の重要な資料でもありました。
18-19世紀にかけて、産業革命で失われていく自然や農村が「絵になる!」と画家たちがこぞって押しかける「ピクチャレスク・ツアー」が盛んにおこなわれるようになります。
線少な! 上手じゃないとできないやつです。デッサン的な絵は画面が黒くなってるほうが上手に見えるから。
農村へ通う画家(バルビゾン派かな?)の姿を皮肉った作品がこちら。
画家に積みわらに寄りかかって休憩するポーズをとらさせられて閉口する農民。なんでこんなところに絵を描きに来るんだろうな、と不思議に思ったに違いありません。
古い時代の建築物もピクチャレスク・ツアーの的。
農村に飽きると(?)画家たちは都市を描きます。旅行というか、もうさまよってますね。
上下が分からんことでおなじみの(?)モンドリアンの作品も。上空から見たブロードウェイの地図にも見えなくもない…のかな。
ほかには、SFやスチームパンクを思わせるフィリップ・モーリッツのエングレーヴィングや、梱包芸術で有名なクリストとジャンヌ=クロードのプロジェクトのスクリーンプリント、「TOKYO まちだ国際版画展」入賞作品など。
旅先では絵を描くよりも写真を撮ることが多かろうとは思いますが、オーバーツーリズムが問題になっている昨今、旅の計画と行動はどうぞ慎重にね。
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展覧会情報
会期:2023年7月22日(土)~9月24日(日)
会場:町田市立国際版画美術館 企画展示室1、2
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