「両大戦間のモダニズム:1918-1939 煌めきと戸惑いの時代」を観ました。ふたつの世界大戦の狭間にあたる約20年間に焦点を当てた版画の展覧会です。
第一次大戦後の好景気に沸くフランスとアメリカは「狂騒の時代」を迎えます。自動車や飛行機といった工業的モチーフや、華やかなサーカス、キャバレー、女性を飾るファッションがアーティストを刺激します。
「ラシエット・オ・ブール(L'Assiette au beurre)」は1901〜12年までパリで刊行された政治的、社会的風刺が効いた絵入り週刊誌です。37号はフランスの人々が空の上で生活するようになった近未来を空想した特別号。
ポスターや雑誌の分野で活躍したギヨーム。たくさんの飛行船で空が混雑している様子を4ページ分にわたって展開。いつの時代も「未来」はなにがしかが空を飛んでいるものです。
戦争の光景を描く画家ももちろんいました。
オットー・ディックスは第一次世界大戦でドイツ軍に志願し従軍。除隊後は戦地でのトラウマを表現するような作品を多く残しました。第二次世界大戦ではナチ党の国民突撃隊に徴兵されます。この絵を見たら、戦地は怖かったんだなって思いますよね…。ちなみに毒ガスはその被害があまりにも悲惨で、第一次大戦ののち戦争での使用は禁止されます(ジュネーブ議定書、1925)。
「ガゼット・デュ・ボン・トン(La Gazette du bon ton)」は1912年にフランスで刊行された高級ファッション雑誌。各号は、テキストとイラストレーションを大胆にレイアウトしたデザイン性の高い本文ページと、ポショワール(亜鉛や銅版を切り抜いた型を用いて刷毛やスプレーで彩色する西洋版画の一種。ステンシル)で1点ずつ手作業で彩色された10点程度のファッション画から構成されています。1925年にアメリカの「ヴォーグ」誌に吸収されて廃刊となります。
一方ドイツでも「ステイル(STYL)」というやはりリトグラフや手彩色の高級ファッション誌が1922-24年に刊行しています。
当時のファッション雑誌は写真製版による機械印刷が主流で、本誌のように手作業で彩色された高級雑誌は1929年の世界恐慌以降に姿を消します。たしかに、こんな手彩色のファッション雑誌は持っているだけでおしゃれだし、ぜいたくですね。
そんな西洋のおしゃれは日本にもやってきます。
「婦人グラフ」の表紙はパリの雑誌「アール・グー・ボーテ(Art Goût Beauté)」のパクリでした。
ところでサーカスといえば、アンリ・マティスの版画集「ジャズ」の中の一枚を思い出しますが、本展の最後にはフェルナン・レジェ晩年の挿絵本「サーカス」が紹介されていました。
「サーカス」は次のような言葉で締めくくられています。
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20秒で破壊できる樫の木が、再び芽を出すのには1世紀かかる。
鳥たちはいつも素晴らしく着飾っている。進化という言葉は無意味だ。
そして、世界に食物を供給する牝牛はこれからもずっと時速3キロで進むだろう。
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破壊は一瞬でも再生(生産)には気の遠くなるような時間がかかる、と戦争によるダメージを表現するような文章がつづられています(ごめん、「鳥たち…」のくだりの表すところははよく分からないです)。
この時期の大きな事件といえば、新興の芸術活動であるシュルレアリスムやロシア・アヴァンギャルドなどの作品とその作家が、ナチによって「退廃芸術」として弾圧されることでしょう。アートも命懸けです。
戦勝国は好景気に沸き、敗戦国は復興(あるいは復讐)に燃え、やがてまた訪れる戦渦へ向かうまでの幻想のような期間が、「1918-1939」。日本も大正時代なんて「大正ロマン」なんつってまるで架空の時代みたいだもんね。
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展覧会情報
会期:2024年9月14日(土)~12月1日(日)
会場:町田市立国際版画美術館 企画展示室1、2
主催:町田市立国際版画美術館


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